case study

【EdTech導入事例vol.2】
大阪市立水都国際中学校様 導入事例

  • 【学校】大阪市立水都国際中学校(公設民営)
  • 【easel使用学年】中学1~3年生
  • 【どの時間でeaselを活用したか】総合的な学習の時間の自学自習用教材として使用

プログラミングは新しい表現の道具

easelとの出合いはネットニュースで北海道教育大学 附属釧路義務教育学校 後期課程の更科先生の取り組みを知ったのが最初でした。プログラミングにアートの要素を掛け合わせた教材は他になく、とにかく「かっこいい!」「つくってみたい」という一心ですぐにコンタクトを取りました。

そんなふうにスタートしたのですが、私自身はそれまでプログラミングは全く触ったことがありませんでした。ただ、“プログラミング=コードが書ける”ということではなく、油絵か水彩画かという違いと同じで、自己を表出する道具の一つとしてプログラミングを捉えました。

大事なことだけでなく、面白いこと、楽しいこと

水都国際中学校では中学1~3年生の総合的な学習の時間で“Creative Learning”を行っており、その中でeaselを活用しています。そこで大切にしたのは生徒たちの「楽しい」「やってみたい」を喚起すること。初めてだからできないのは当たり前で、むしろそこから“問い”が生まれ、生徒同士が教え合うようになります。

「楽しい」「やってみたい」を喚起するために、最初にコードではなく作品例を示しました。中でも生徒がソースの中の一部の数値を触ることで、大きく作品が変化するものだと驚きも大きく、自然と「こんなのできた」や「これどうなるの」という声が出てきました。

例えば図形を書くことができた生徒には挙手してもらい、できていない生徒のところに行って教えたり、色をつけたり透明度をつけたり、さらに乱数を入れて点滅させたり。そうすることで、できない生徒を引き上げて、できる生徒も教える過程でより学びを深めるという自律的な学びの土壌が生まれたと思います。

ただ、最初はちょうどコロナで授業がオンラインになったこともあり、生徒がどこまで進んでいるのか進捗管理に苦労もしました。隣に誰かいれば生徒同士教えやすいのですが、そこはオンラインならではの課題です。

そうした中でスプレッドシートを用いた「みんなでつくるコード表」やeaselで学んだことを実践する演習問題、デジタルアートのプラットフォームであるNEORTなどを生徒たちに共有。生徒が自分たちで学んでいくことができる環境づくりを意識しました。

2021年12月現在はオフラインで授業が行えるようになったため、例えばeaselの「まなぶ」編の変数と算数を次回までに読んできてねという形で生徒たちに伝え、翌週それらが使えるとどんなことができるか、グループでホワイトボードにコードを書いてプレゼンを行い、みんなで共有するといったことを行なっています。

column|Creative Learningとは

“Creative Learning”では、高度に多様化した世界において必要なのは問題発見力と問題解決力、そしてより繊細なコミュニケーション能力であると考え、「わたし」を探究するアート思考と「せかい」を探究するデザイン思考の2つから学びをデザインしました。その中で、プログラミングは自らのイメージや想いを表出するための手法であるとともに、論理性を学び、自己の表現を広げる体験として位置づけました。

なぜプログラミングを学ぶのか

もちろん、子どもたちに伝える上で、そもそもプログラミングって?ということを自分なりにネットや本で調べて授業に臨みました。

そこで伝えたのはこう書いたらこうなるという技術的なことではなく、プログラミングが必修化される中で高校にも情報が共通テストとして入ってきてみんなが学ばなければならないこと。その意味です。それは20年前の英語と同じで、技術者になってほしいということではありません。

例えばお母さんに「ご飯」と言ったら「今準備するから待ってね」などと言ってくれるかもしれませんが、コンピュータに「ご飯」と言ってもこちらの意図は伝わらない。それを伝えるためには共通の言語(プログラミング言語)と論理(文法)が必要です。

これは人間同士のコミュニケーションにも通じるところがあり、例えば海外の方だと英語など共通の言語で伝えないといけないし、それほど近しい人でなければ「I’m hungry. When is the meal ready?」と、①前提②その後にやってほしいこと、というふうに論理的に伝える必要があります。

こうした“コンピュータとの対話”を通じて、ロジカルに考えること、伝わらない時はなぜ伝わらないのか、問題を発見したり解決する力、そしてより繊細にコミュニケーションする力が身についていくと考えています。これからの社会で生きていく上で単に技術の習得ということでなく、そうした力が大切であるということを、まず最初にみんなで共有しました。

column|学習指導要領の中での位置付け

学習指導要領という観点から言うと、本校では総合的な学習の時間で導入しましたので、“自己探究”の部分にeaselの教材そのものを、easelを通じた作品制作の部分に“問題解決”の部分をあてています。

チームで一つの作品をつくりあげる

今回別のプロジェクトでチームでプロジェクションマッピング用の映像を作るということにも取り組みました。この発端になったのが、INERTIAの担当者と話をしたこと。学校ではどうしてもできる子とできない子が出てしまいますが、できない子をどう引き上げるかということを相談。その時にチームで制作に取り組んではどうかという意見をいただきました。

そこで、プロデューサー、ディレクター、エンジニア、音響の4つの役職を設け、生徒たちがそれぞれ自分の特性を考えて、どの仕事を担当するか決めてグループを作りました。

ビジュアルはeaselで使われているp5.jsで作成し、それを音響担当の生徒が作成した音楽と組み合わせ、起承転結のストーリーを持たせて約1分間の映像を作成。ここで私が行ったのは進捗確認のためのミーティングをオンラインで開いて、思ったことを伝えるということでした。

あとは生徒が自分たちでコミュニケーションを取りながら22日間かけて一つの作品を完成させました。この経験を通じて生徒たちも自信がついたと思いますし、私も誇らしく、同時に生徒たちの力に驚かされました。

導入時にINERTIAの担当者と話をしたときに、「easel Award」で学校という枠組みを超えて生徒たちが作品を投稿できる場所や機会があるということを聞いていましたので、総合的な学習の時間では基本的にはそこを目標にカリキュラムを組み立てています。やはり、こうした甲子園のような場があると、生徒たちにも刺激になります。こうしたイベントも活用しながら今後さらに楽しい学びをつくっていきたいと思います。

column|今後easelに期待すること

プログラミングにおいて“アイデア”は数学的な考え方や知識がどれだけあるかという点に左右される側面もありますが、それだけではない、“発想する力”そのものが今後の課題です。やはり、何もないところから作品を作り出すのは難しいので生徒たちは作品を真似る過程で学んでいきます。そのため発想する種となる作例が今以上にたくさんあるといいなと思いました。

easelにはまねぶ(真似て学ぶ)コンテンツがあります。また、「まなぶ」編の各コンテンツにもそれぞれそうした作品が最初に載っていて、ある程度そこで使われている関数について、説明がなされており、例題を解いていく中で学ぶことができます。ただ、位置付けとしては教科書に近いので、もう少しスモールステップで学んでいける問題集のようなものがあるともっと多くの学校が取り組みやすいと思います。