2022年8月22日 月曜日

渋谷QWSにてアート思考を促す展示「ART THINKING WEEK 2022」開幕

 2022年8月20日(土)、渋谷スクランブルスクエア15階にあるコワーキングスペース「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」で、創造的思考を体験するART THINKING WEEK 2022の企画展「よそおうのこれから」が始まった。「よそおう(装う/粧う/扮う)」ことをテーマにした現代アート作品の展示、そしてワークショップやトークといった参加型のイベントプログラムの二本の柱で構成されている。会期は28日(日)まで。

いま問い直す「よそおう」意味や価値の「これから」

西尾美也 DATSUEBA
photo by ©YukikoKoshima

 「よそおうのこれから」は、「よそおう」意味や価値の「これから」を問う企画展だ。主催の株式会社uni’que 代表・若宮和男氏は「『よそおう』ことは社会的コードであり、表現やアイデンティティでもあります」と語る。ART THINKING WEEK 2022のテーマについて詳しく聞いた。

 「『よそおう』ことはあらゆる人にとって身近で普遍的なテーマだと思います。そして近年、環境問題やジェンダーの問題のなかでファッションやメイクのあり方が見直され、多くの人がより高い関心を寄せています。またSNS上での写真加工や自己演出、メタバース空間でのアバターなど、バーチャルな空間でも私たちは日々『よそおう』ことを行なっています。幅広い意味での『よそおう』という行為が、いま大きく変化していると私自身が強く実感していることから、展覧会のテーマとしました。

 コロナ禍ではことさらに、私たちひとりひとりが、社会と個人の境界や距離を意識させられる場面に直面してきました。マスクが象徴的ですが、私たちの身体を覆うよそおいは、自己と他者を隔てるものととらえることもできます。また一方で私は、よそおいとは言葉のようにコミュニケーションの術であるとも感じています。私たちは時に相手に合わせて不慣れな言語を用いることもあれば、詩や歌で字義以上の情報を相手に伝えることもできます」

 様々な解釈が可能な「よそおう」というテーマについて、若宮氏はART THINKING WEEK 開幕以前から参加アーティスト一人一人と対談し、「価値観の凝りをほぐすアート思考ラジオ」(voicy)上で公開してきた。

 「今回、独自の視点を持った多彩なアーティストに参加いただけたことで、『よそおう』ことを多面的かつ立体的にとらえられる場になったのではないかと思っています」

6組のアーティストそれぞれの応答

 「よそおうのこれから」展の会場入り口には、展覧会名を印字した一枚のオレンジ色の布が張られている。会場内のサインも同色の布で統一されており、スタッフは同色のマスクを着用している。オレンジ色の布を頼りに、6組のアーティストの展示を順に巡ってみよう。

 会場に入って最初に目に飛び込んでくるのは、色とりどりのパッチワークのカーテンで仕切られた小上がりのスペース。西尾美也の作品《DATSUEBA》である。三途の川のほとりで亡者の衣服を剥ぎ取る奪衣婆を着想源とする本作は、言うなれば既成概念の脱衣所であり、アート思考の試着室。内部では西尾の映像作品が上映されており、随時ワークショップに参加できる。

写真右から、市原えつこ《都市のナマハゲ》、《デジタルシャーマン・プロジェクト》
photo by ©YukikoKoshima

 その隣には、巫女の姿で活動し「よそおう」ことは異世界との繋ぎ目をつくること、と言う市原えつこの2作品。秋田県のナマハゲの習俗をリサーチし、東京の各都市の文化に則したナマハゲを想像した《都市のナマハゲ》と、Pepper(ロボット)に故人のデータをプログラムし、49日間死者を憑依させる《デジタルシャーマン・プロジェクト》の一機を展示している。

長谷川愛 HUMAN X SHARK
photo by ©YukikoKoshima

 壁側の展示台に置かれた香水瓶とシャーレ、その後ろに流れる水中の映像は、長谷川愛のプロジェクト《HUMAN X SHARK》の展示だ。長谷川は化粧品会社の協力のもと、女性のモチベーションを上げる香水とオスザメを惹きつける香水を開発し、その二つの香水をつけてダイビングを試みる。ファッションやメイクが否応なしに異性へのアピールに紐づけられてしまう現代の消費社会に疲弊している人は、長谷川の言葉にきっと共感を覚えるだろう。

 「よそおう」ことで、人は自分自身の内面を曝け出すことができると語ったのは、ドラァグクイーンや映画評論家など様々な顔を持つアーティスト、ヴィヴィアン佐藤。展覧会初日にヘッドドレスづくりのワークショップを開催し、参加者とともに渋谷の街をパレードした。QWS中央の細かく間仕切りされたシェルタースペースに、ヘッドドレスの素材や未完成品を陳列するインスタレーションを展開し、よそおいの内側を提示している。

AKI INOMATA girl, girl, girl…
photo by ©YukikoKoshima

 通路を抜けた先にあるのは、生物の習性に着目し人間とは異なる視座から現代社会を見つめようとするAKI INOMATAの作品《girl, girl, girl …》。大きなモニタに、モデルが衣服を着用した映像と、その衣服のハギレを与えられカラフルなミノをまとうミノムシの映像とが静かに流れている。ミノムシとの対比によって、人間が「よそおう」ことに付随する意味の多さに改めて気付かされる。

 会場奥のVIPルームには、高嶺格の作品が展示されている。入り口のモニタの映像作品だけでなく、VIPルーム内にも作品が展示されているので、会場スタッフに声がけを。(入室にはスタッフの同伴が必要。)作品を見れば、この特別扱いの理由が理解できるだろう。生まれたままの姿で玄関のドアを開ければ、たちまち法の壁に直面する私たちは、実はよそおうことを強制されてもいる。

アートがつくる「結び目」

 VIPルームの手前の壁の一面には、オレンジの布に二つの問いかけが掲げられている。

 あなたにとって「よそおう」とはなんですか?
 そしてこれからどんなよそおいを求めますか?

 「よそおう」というテーマに対するアーティストたちのアプローチがそれぞれ異なったように、壁に付箋で貼られた来場者の回答もさまざまだ。ぜひあなたも会場で自分なりの答えを見つけて付箋に残していってほしい。

 スパッと割り切った答えはなかなか出てこないかも知れない。それでも企画展の会場に足を踏み入れる前と後で、意識は少し変わっているのではないだろうか。アートは、日頃私たちが看過しがちな社会の歪みに光を当て、うやむやにしていた疑問や違和感を改めて認識させてくれる。ここでの体験は、息苦しい世の中で平静を装う自分に向き合い、無意識のうちに行なっていた誰かへの押し着せに気づくきっかけになるだろう。

 ART THINKING WEEKは、この会場や会期で完結するものではない。主催の若宮氏は同企画を一つの「結び目」と考えていると言う。それは人と人の結び目であり、今までの自分と「これから」の自分の結び目ということだろう。そして今年度のART THINKING WEEKはビジネスパーソンに向けてだけでなく、「これから」を担う子どもたちの参加も呼びかけている。夏休み最後の思い出に、ぜひ家族で足を運んでいただきたい。

文=松崎未来

INFORMATION
ART THINKING WEEK 2022「よそおうのこれから」

  • 期間:2022年8月20日〜28日
  • 場所:SHIBUYA QWS(渋谷キューズ) 渋谷スクランブルスクエア15F
  • URL:https://atw2022.stores.jp
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